遠近両用レンズとは
1.遠近両用(累進レンズ)とは?
人間は40代から眼の調節力が衰え始めます。近くのモノが見にくくなる時が出てきます。
近くを見るためにメガネを外すことが増えたり、逆にメガネを掛ける必要が出ます。
20代の頃は近くも遠くもすんなりと見ることができたと思います。30代の方もそうだと思います。
しかし、上の年代別の図のように年齢を重ねると段々とピントを合わせる力(調節力)が低下し距離を取らないと見えなくなります。(※遠方がハッキリ見えることを前提とした図になりますので、この範囲に当てはまらない方もいらっしゃいます。)
遠近両用メガネはメガネを掛けたり外したりする手間を省いてくれる画期的なメガネです。遠近両用レンズであれば一本ですんなりとどこでも自然に見えます。
遠くを見るときメガネをずらしたり、近くの書類などを見るときにメガネを外す動作は年齢を感じさせてしまいますが、遠近両用レンズであれば自然な感じで生活できるので若々しい印象になります。
メガネを使うことで遠くや近くが見えていた方と、メガネ自体が不要であった方など様々な方がいらっしゃいます。
どのような年代・性別の方でも遠くをしっかり見えるようにすると近くが見えにくいと感じるようになる瞬間がいつか訪れます。
昔は遠くも近くも良く見えていたのに、なぜか年齢が上がるにつれて手元が見にくくなるのか不思議に思われる方も多いかと思います。
私たちの目は水晶体というレンズが入っています。下の図のようにこの水晶体の周りには毛様体筋というものがありレンズの厚みを変化させることで自動でたい所にピントを調節してくれます。
人間の眼はカメラでいうところのオートフォーカス機能が自然に備わっている高機能レンズになっております。水晶体と毛様体筋はピントを合わせるための重要な役割を担っております。
□遠近両用(累進)レンズの種類と特徴、良いところ・悪いところ
遠近両用レンズには大きく分けて2つのタイプがあります。
1つは度数の変化が分かりにくい累進レンズです。
2つ目が近くを見る部分がはっきりわかる二重焦点レンズ(バイフォーカル)です。
遠近両用レンズというのはレンズの上の部分に遠くを見る度数が入っております。レンズ下の部分に近くを見るための度数が入っているモノです。1本あれば遠くも近くも見えることと、人から見られた時にも度数が上から下に変化しているレンズだと分からないので、年齢を感じさせません。
中距離の微妙な距離のモノなども視線の移動や顎の上げ下げで見やすくできます。なので意外と1本すべての距離をカバーできるので機能的ではあります。
ただし、上から下にかけてレンズの度数が変化しているのである一点を見た時に視界の端に歪みが発生します。眼の機能が良い方などは歪みに敏感に反応してしまい見え方が気持ち悪く感じることもあります。
メガネレンズの使い方を練習しないといけません。また、慣れまでに時間を要することがデメリットです。
一般的に普及している遠近両用は以下の写真です。
届いたばかりのレンズはこのように円形で届きます。お客様のフレームに合わせてレンズをセッティングして加工します。
上の丸の位置に遠く用の度数が入っております。下の楕円には近く用の度数が入っております。
上から下にかけて度数が変化していくため一見しただけでは遠近両用を使っているようには見えません。
遠くを見るポイントと近くを見るポイントの境が無いためパッと見ただけでは普通のレンズとの違いがつきません
(画像の白い線はメーカー様が製作時に間違えないように目印として付けてくれる線です。加工が終了してお客様にお渡しするときにはすべて綺麗に取り去ります。)
□バイフォーカルレンズの良いところ・悪いところ
そしてもうこちらが遠近両用バイフォーカルレンズです。
レンズにしっかりと近くを見るポイントがポケットのように入っているのでどこで見れば良いのか分かりやすくなっております。
その反面見られたときに明らかに近くを見るポケットがしっかり分かってしまうので最近は選ばれる人が少なくなっております。
メリットは遠くを見た時に近くの度数の干渉が無いのでスッキリと見えるというメリットがあります。
バイフォーカルレンズは、遠くを見るレンズに近くを見るための子窓を付けたレンズです。
製作が難しいことと、高さを合わせる知識と経験が必要なため専門店のみのお取り扱いかと思います。
量販店やディスカウント店ではほとんどご提案はないかと思います。
◇遠近両用メガネの使い方のコツ◇
遠くを見る際にはレンズ上の方で見ます。アゴ をなるべく出さないようにして引きます。
階段の登り降りの際に、目線だけ動かすと足元が揺れます。目線だけ下げずにお顔全体をしっかりと下に向けて登り降りを行います。
近くを見る際にはレンズ下の方で見る事を心掛けます。頭は動かさず、目線だけを下げます。もしくは少し顎を上げます。
遠近両用累進レンズの場合では、目線だけを上下左右に動かすと歪みを感じることがあるので、しっかりと見たいモノに必要な部分を合わせる必要がありますが、慣れていくうちに自然にどのように動けば見えるのか分かりますので、自然に体が動くようになります。
遠近両用を初めてご利用の場合には必ず練習が必要です。慣れるとどこでも簡単に良く見えるようになるのでこれほど便利なものはないと実感していただけるかと思います。
□遠近両用に適したフレームの選び方
どのようなフレームにでもレンズを入れてもらうことはできますが、フレームの形状によっては全く同じ度数で同じレンズの種類でも見え方が変わります。
見え方が変わる理由として目とレンズの距離が重要です。
鼻が当たる部分のパーツ(鼻パット)が稼働しないプラスチックフレームを選んだ場合には目とレンズの距離が近くなるため、視線移動と顎の動かし方が重要になります。
鼻が当たる部分のパーツ(鼻パット)が可動するものであれば調整がかなりできますので好みの位置で好みの見え方に合わせることができます。
眼だけを上下させるという動作は意外と難しくて目を上に動かそうとするとほとんどの方が顔も同時に動いてしまいます。
最初は使い勝手に疑問を感じる方も多いのですが1週間ほどで慣れてきますのでいろいろな見え方を楽しんでいただければと思います。
その他にフレームのカーブが強いと見え方の中で歪みが発生してしまいます。思っていた見え方と違ってしまったりすることもあるのでフレームのカーブは見え方の非常に重要な要素のなります。
例えばスポーツ系のハイカーブフレームにハイカーブのレンズで遠近両用レンズを入れるとかなり歪みます。少し横を向くだけで距離感や景色が伸びたりしてしまうのでレンズの設計に合ったフレームを選ぶことは非常に重要なことです。
□初めての遠近両用レンズをご利用の方に
初めての遠近両用レンズをご利用の方にはフレームのレンズの上下の大きさが大きいものをオススメしております。
大きいレンズを推奨してはいますが、上下幅が狭めの眼鏡でも製作は可能です。
ご要望のフレームに合わせて製作可能かご相談させていただけると思います。もちろん他店様でご利用されていたフレームでも可能です。
選ばれたフレームを用いて実際のレイアウトがどうなるのかをシールを貼ってご覧いただくこともできます。
□フレームの上下幅
レンズの上の方と下の方では違う度数が設定されております。その間にも度数が変化しているところがあり、そこを累進帯長といいます。
累進帯長は注文の段階で長さを変えることができますのでフレームの形状に合わせて遠近両用のレンズを加工して入れることが可能です。
遠くを見る上部と近くを見る下部の距離が短い設定のレンズ累進帯長を選んだ場合には、遠くと近くの視点の切替えは早く楽になりますが、度数の変化が速いため歪みが大きくなります。
細いフレームを選ばれた方や、遠くと近くを頻繁に切替えて見るという方にはこちらの方が使い勝手が良いかと思います。
累進帯長を広く取ると同じ度数でも歪みは小さくなりますが、しっかりと目線を動かさないといけないので、たまに近くのモノを見る必要がある方にオススメです。
度数の変化が緩やかなメリットとして歪みが少ないというポイントがあり遠方がスッキリ見えます。
□レンズの価格による見え方の違い
レンズには種類があり違いがあります。レンズの違いがあるのに薄型レンズが均一価格に設定されているお店があったり、レンズの種類や違いよって価格が分けられているお店があったりするかと思います。
遠近両用レンズというのは“標準設計”から“お客様のご利用用途に合わせた個別オーダー設計”まで種類が多く存在しますので、同じ商品を高く販売したり安く販売しているようなことはありません。
高品質なレンズには以下に書いておりますような付加価値が付いてきます。
遠近両用レンズ等は全てが一本で補えるような呼び方をされておりますが実際にはそういうわけにはいきません。
一本の中に無理やりすべての度数を入れ込んでいるので、簡単に言ってしまうと遠くを見ていても近くを見る度数が干渉してきて歪みが発生し見え方の違和感やストレスに繋がります。
最近は研究が進み一枚のレンズの中に全ての度数を入れても見え方に違和感やストレスを感じることが少なくなるレンズが開発されてきました。
用途に合わせたレンズの設計が増えるにつれて、一枚のレンズの中に度数を入れ込んでも歪みにくい設計技術が発展してきました。
そのおかげでレンズの種類やグレードによる価格の違いが生まれてきました。同じ度数でもグレードを下げると(旧設計レンズ)歪みによる違和感やストレスを感じやすくなります。
メガネにおいては家の中だけという方も意外と2時間以上ご利用になる長時間の付き合いになりますので違和感やストレスの少ないレンズをオススメしております。
例えばですが年齢を重ねると、眼のピントを合わせる力(調整力)が落ちてくるのと同時にストレスを感じやすくなります。
そのため遠近両用レンズの場合には近くを見るための度数(加入度)を強く大きくします。近くを見るための度数(加入度)が上がると,、遠くと近くを見る度数の差が大きくなるため歪みが大きくなります。
(遠近両用レンズの特徴ですが見え方の違和感やストレスが大きくなります。)
レンズの用途によって種類とグレードは様々ですが、レンズのグレードを以前にご利用されたものよりグレードダウンした場合にはレンズ設計の歪みはほとんどの場合で大きくなりますので違和感やストレスを大きくしてしまうことに繋がります。
レンズの度数が進行し遠くと近くを見る度数の差が大きくなる場合では同じグレードのレンズでも歪みが大きくなりますので見え方が変化します。
近くが見えにくくなったために度数を強くして見えるようにすることは可能ですが、度数が上がると歪みが大きくなり違和感やストレスが増えます。
見え方による歪み、違和感やストレスはレンズグレードや、レンズの設計が良くなることで自然な見え方になりスッキリします。
お客様に合うレンズを見つけるには、どのようなポイントがお困りなのかをしっかりとヒアリングを行いレンズの度数を加味してご相談させていただくことが一番かと思いますので最低1時間はお時間を頂戴したいと考えております。
見え方によるストレスや違和感などをお持ちの方は是非ご相談ください。
2.レンズの種類について
(遠近両用 中近両用 近々両用 アシストレンズ)
レンズの上から下にかけて度数が変化する遠近両用レンズは“累進レンズ”と呼ばれます。
累進レンズの中に
→遠近両用レンズ
→中近両用レンズ
→近々両用レンズ
→アシストレンズ
上記のような種類があります。
一般的に“遠近両用レンズ”は数ある種類の一つであり、遠くと近くは見やすいですがお家の中などは中距離~近距離なのでピントを合わせるのに目の力(調節力)を使わないといけなくなりますので疲れます。
“遠近両用レンズ”のほか、お家やお仕事場で役に立つ室内向けの“中近両用レンズ”、デスクワークに特化した“近々両用レンズ”、40代ぐらいまでの方に有効な“アシストレンズ”という4種類のレンズ設計が存在します。
お客さまのご利用になられるシーンに合わせて使い分けていただくことで、見ることが楽になりより良い見え方で快適にご利用いただけます。
◇“遠近両用レンズ”の特徴◇
累進レンズの元となる基本的なレンズです。多くの方がこちらを利用されています。
遠近両用レンズは累進レンズの特徴を最大限に生かし、遠く、中ぐらいの距離、近くを利用できるようにレンズの中に度数を全て詰め込んだレンズになります。
名前の通り、“遠く~近く”をより良く見るためにレンズの度数配分が設計されておりますので万能タイプのレンズです。メガネを掛けたまま出歩くことを想定した設計です。
下図右の、青い部分が遠くをよく見るために割り当てられた部分でして多く割り当てられており遠方がスッキリ見えます。
視線移動や顎の上げ下げで見たい距離に合わせて見ることが可能です。
弱点としては、“遠く”を見た時でも“中間~近く”の度数が視界の端で干渉してくるので揺れや歪みを目が感じることがあるため、はじめての遠近両用レンズとしてご利用になられる場合には驚かれる方もいらっしゃいます。
遠近両用とは言ってもレンズのどの部分でも100%が見えるわけではなく使い方と工夫が必要です。
最初はレンズの見方の練習が必要なのですが慣れると、自転車を乗るように何も意識せずに使うことができるようになります。
上図のような目の位置の場合にはピンクの線で示した部分に歪み、違和感、ストレスを感じることがあります。
遠くを見る部分に眼の位置があっても目の端では歪みが干渉してきて見え方の違和感になります。遠近両用の見え方が苦手な方はこのような歪みによる違和感やストレスが原因で掛けにくいとおっしゃるようですが、掛け続けるとハッキリ言ってかなり便利ですし使い続けると慣れます。
初めて自転車を乗った時のように練習をすれば意外とすんなり馴染みます。
上の図の“遠近両用レンズ”は青いところが遠方が見やすくなっております。真ん中にある黄色い部分が2m~5mぐらいの中距離が見やすく、薄いピンクの部分は40cm程度の近くが見やすくなりますので携帯電話やスマートフォンなどが見やすくなります。
車や電車での通勤の方は普段は遠くを見ていますが中距離に該当するカーナビや電車の広告などは自然に黄色い部分に視線が合い中距離を見ることができます。車内や電車内では薄ピンクの部分でスマートフォンに手帳や新聞などを視線移動で見ることができるので一本の眼鏡でほとんどすべてを網羅できます。
上の図を見ると「意外と見える範囲が狭いと思った」という方がいらっしゃるかと思いますが、人間の視線移動は上下に動かすことが多く、左右を見る時には体や頭が自然にその方向へ向きます。
ですので中間距離なども慣れによって時間を掛けずに自然にピントを合わせられるようになります。
ただし弱点として、長時間のPC作業やスマートフォンは疲れます。
近くを見る度数の配分が薄ピンクのところに集約されているのでPCまでの距離を40cm~50cmとした場合でも顎を動かさずに目線のみを下方向へ落とすか、顎を上げて見る必要があり長時間の近くを見る作業は首が痛くなります。顎を上げ続けるのも体力を使うので疲れの原因になります。
また、階段を降りる際などは最初のころは注意が必要です。足元をしっかりと顔を下に向けてみる必要があります。
それは遠方を見ていても手元を見るための度数が干渉してくるので、しっかりと下を見ないと距離感が若干変わり踏み外してしまうかもしれません。
車を運転される際には、車線変更やバックすることがあるかと思います。慣れるまでは車線変更やバックの距離感が今までと若干違って見えたりする可能性がありますが、こちらも慣れると気にせずご利用いただけると思います。
また、老眼が進み手元が見えにくくなり初めて遠近レンズなどで手元を見た場合には写真のように手元が歪んで見える可能性があるので、手元を見るための度数(加入度)が大きくなる前から慣れて頂くのをオススメしております。
レンズ下の方が湾曲しているように見える可能性がありますが、掛け方や使い方で解決できる場合がほとんどです。
(写真はあくまでもイメージなので実際の歪み方と違う場合がございます。)
2つの写真の違いは手元のキーボードの歪みの違いを表しております。
2枚目の写真は歪みを抑えた設計です。
度数が同じ場合で、もレンズの設計やグレードの違いによって見え方が変わります。遠近両用レンズを使えば、遠くも近くも一本で見ることができるのでメガネを老眼鏡にかけ変える必要はありません。見方の工夫で瞬時に遠方と近くで切替えられますのでお車の運転でナビと道路状況をスムーズに確認していただくことができます。
お部屋の中では携帯電話、スマートフォン、新聞、テレビ、壁掛けの時計などもスムーズに視線移動で見ることができます。
お食事などでも近くを見るポイントでご飯を見ることができますので美味しく食事を楽しむことができます。「食事は目で見て楽しむ」という言葉があるように良く見えるようになるとお食事もおいしく楽しく感じると思います。
このように遠近両用レンズは非常に便利です。この利便性の良さを体感していただくと、遠近両用レンズを使わない場合にはいかに不便な状況であるかと実感していただけるかと思います。
◇「中近両用レンズ」とは◇
中近両用レンズ 大きく分けて近く重視と、遠く重視の2種類があります。主にお部屋の中などでお過ごしの際にも活躍します。(見え方がきつくないのでリラックスできます。)
□近く重視
別名「室内用レンズ」「事務作業向けレンズ」と言われるものです。
遠近両用レンズは全てが見える万能のように思われますが、遠近両用レンズの設計は遠方を見るための範囲を広く、近くを見るための部分を狭く設計されております。
また、見たい部分を見るためにも上述したように視線のみを動かしたり、顎を上げたり下げたりして見る工夫が必要になります。
(遠近両用レンズは、遠方を快適に違和感なく見るためを目的に設計されております。近くは短い時間少し見るためを想定しております)
事務やデスクワークがメインのお仕事をされている方が遠近両用レンズを使う場合には、近くを見るための範囲が狭いので遠近両用レンズは作業に対して不向きな場合が多いです。
作業ができないわけではないのですが目線の移動や、近くを見る時に顎を上げてレンズの下の方で近くを見る必要があるので首が痛くなったり疲れたりします。そのため事務作業では遠近両用レンズは不向きになります。
室内でのお仕事、事務のお仕事の
ためにこの中近両用レンズと言うものがあり非常に便利です。
上の図のように見やすい距離としては度数にもよりますが、距離として約40㎝~5mです。
(手元の伝票作業やパソコンの入力作業~営業さんの行先確認をするためのホワイトボードを見る、棚の商品と手元の伝票を合わせるといった作業をされる方にもってこいのレンズです。)
中近両用レンズの場合には、上の図や写真のように机(PCや伝票作業)~テレビを見る距離ぐらいまでの室内をカバーします。(写真はTVにピントが合っている状態の時で、手元がぼやけているように見えますが視線移動で手元も見やすくなります)
顎を引くことで遠くの見え方も良くなるので、中近両用レンズの眼鏡のまま外出していただいてもほとんど不自由なくお過ごしいただけるかもしれません。(視力としては0.8ぐらい迄が限界ですのでお車の運転には不向きです。)
中距離~近距離の度数がたっぷり確保されていることにより上下の度数の変化が少なく歪みが抑えられます。もちろん歪みも感じにくくなります。
□中近両用レンズの特徴
中近両用レンズの特徴としまして、載せている写真のようにあっちこっちに移動もするけれども、ずっと机に向かうのではなく事務作業をしつつ室内で動き回るような状況で活躍します。もちろんお家などでも活躍します。
中近両用レンズは室内で快適に過ごせる設計ですので抽象的な表現ですが柔らかい見え方になります。
遠方専用の眼鏡では度数がしっかり入りすぎているので室内においては中近両用レンズをご利用いただくと程よいリラックス感で見ることができ目のピントを合わせる力(調節力)も過度に使うことが少ないため目の負担を軽減することができます。
手元と室内の充実度が上がりますので満足度はかなり高いと思います。(遠方は遠近両用が勝ちます)
在宅ワークが増えているこの時代にはかなりおススメのレンズになりますので、是非お気に入りのフレームに中近両用レンズをお試しいただければと思います。
(筆者も記事を書く上でも中近両用レンズを利用しております。)
□遠く寄りに設計された中近両用レンズ
「遠中近両用レンズ」ちょっと遠くまで見るレンズ(「歩ける老眼鏡」)
遠く寄りに設計された中近両用レンズです。(「歩ける老眼鏡」と言われていたりします)
歩ける老眼鏡というコンセプトや謳い文句が使われますが、厳密に言うと見え方は遠近両用と中近両用レンズの間ぐらいのレンズです。
ですので完全に近くに絞った老眼鏡ほどは近くがハッキリとは見えませんが通常の遠近両用レンズよりは近くが充実しております。
レンズの位置によって見え方が変わりますので使い方の練習は必要です。
外出してコーヒーを飲みに喫茶店に入り新聞を読んだりスマートフォンを使ったり街中でのご利用を想定しております。
もちろんお車の運転のような場合でもご利用いただける見え方にはなりますが遠近両用程迄には遠方がしっかり見えるわけではないです。
メガネを掛けた時の矯正視力にもよりますがご利用にあたっては全く運転ができないというわけでもございません。
遠近両用ほどしっかり度数が分かれていると歪みなどを感じやすいです。
遠近両用レンズをご利用されて”しんどい”や”見にくい”といったことを感じる方には是非お勧めしたいレンズになります。
こちらのレンズも遠近両用と比較すると中近両用に近い特徴がありますので、度数の変化は緩やかで歪みは少なく違和感を抑えることができます。
また、中長距離~手元まで見える範囲をカバーしていることと広い範囲をカバーするレンズですので幅広いシーンと幅広いニーズにお応えできるレンズかと思います。
測定しましたお度数や現在使われておりますレンズのお度数を元にしてテストレンズにてお試しいただくことも可能です。(仮の枠にテストレンズを入れてお試しになります)
◇「近々両用レンズ」~目の疲れを軽減する設計です~◇
作業効率が上がる近く用レンズになります。
主にデスクワークが多い方向けのレンズになります。伝票の処理をパソコンに入力したりする場合には手元を見てモニターを見てという作業が発生します。
この場合も実は25㎝(手元)~66㎝(モニター)ぐらいが作業距離と言われております。距離が変わるとやはり実際には度数の変化が発生しますのでこのような近々両用レンズは非常に作業効率が上がり目が楽になります。
レンズ上部分にパソコン距離が見える距離の度数を設定します。
レンズ下部分に手元の資料・伝票やスマートフォン・携帯電話が見える度数を設定します。近くを見ることに特化したレンズ設計ですので遠方は見えませんが、デスクワークに集中して行うことの多い方には、作業効率も上がりますし目が楽になるレンズになります。
筆者自身もこの文面を入力する作業中には手元の資料を確認しながらモニターを見るので近々両用を使用しております。
筆者自身は遠方用の眼鏡であっても自身の眼のピントを合わせる機能(調節力)で近くを見ることができますが、遠方用のレンズ度数では疲れてしまうのでデスクワーク用と普段用で掛け替えております。(作業効率も良くなりましたし、なによりも楽です。)
近くを見ることに特化したレンズ設計なので歪みが非常に少なく単焦点よりも使い勝手が良く見える範囲が広がるのでオススメしたい近々両用レンズになります。
こちらのレンズを搭載したメガネフレームを一本机に用意しておくと作業の効率が格段に良くなるので今までの見え方の苦労が何だったのかと感じていただけるかと思います。
上の写真は近々両用レンズを使用するにあたってカバーできる範囲をミニチュアで表現しております。
◇「アシストレンズ」~サポートレンズ~◇
手元を見ることが増えた若い世代に向けて開発された新レンズです。
特に若いお客様の度数の変化の特徴として30代ぐらいまでは度数の進行が激しく起こります。理屈として立証はされておりませんが、近くを「凝視」して見ることが多くなると人間の体はその動作に対応しようとします。
小児の眼球は成人の眼球と同じ大きさではなく成長と共に大きくなるのですが、近くを見る時間が長くなるにつれてピントを合わす必要が出てくるため眼球も“近くを見る動作”に対応しようとします。これにより眼球自身が焦点を合わせやすくするために大きくなり眼軸が伸び(←筆者がこのタイプです)近視の度数が進行することが多いようです。
そこで考えられたのがアシストレンズです。
近くを見るためには、遠くが良く見えるレンズ度数が入っているメガネでは眼の中でピントを大きく調節する必要があります。ピントを大きく調節することが無ければ眼球(人間の身体)は対応しようとしなくなるので、近くを見るための緩い度数をレンズの下部に入れたモノがアシストレンズになります。特にスマートフォンや携帯、タブレットやPCなどを頻繁に使う世代にむけての高機能高性能レンズになります。
近くを見る時に働く筋肉をサポートしてあげることで、目の疲労を抑え度数の進行をも抑えようというレンズです。特定の範囲に特化したレンズですので利用するところは限定的ですが年代問わず使えるレンズですのでテストレンズなどでお試しいただければと思います。
3.専門性の高いレンズですのでお客様に合わせたフィッティングが大切です。
累進レンズの中には
・遠近両用レンズ
・中近量凹レンズ
・近々両用レンズ
・アシストレンズ
があり、さらに細かく様々な設計がありますが現在各レンズメーカーより上記のような種類が主に販売されております。
眼鏡店スタッフによって眼とレンズまでの頂点間距離、レンズの傾斜角度、フレームのカーブ、目と目の距離、測定したレンズ度数など多種多様なデータをもとにレンズが製作され加工してメガネとして出来上がります。
レンズメーカーが全国のお客様からデータを取得した平均値から算出した既製品のお取り扱いもございますが、当社ではレンズの見え方に拘りがありますので目の位置などにアイポイントシールを貼ったりする作業などによってどのレンズに対しても適正な見え方になるようにフィッティングを心がけております。
メガネのイシガミでは、お選びになったフレームを実際に掛けていただきアイポイントを決定させていただきます。
その前にはまず、お客様のご要望をヒアリングさせていただきます。
ヒアリングによっては、1本ではなくメガネの設計上の限界がありますのでご用途によって2本お勧めする場合もございます。
特に遠近をお求めのお客様には中近などの便利さを感じて頂きやすいのでテストレンズにて見え方を体験していただくことがあります。
フレーム傾斜角度の測定
・フレームの傾斜角度は5~10度程度が視線移動の関係から理想的と言われております。個別オーダー(インディビジュアルオーダー)の場合にはお客様が実際にかけた実測値をあてはめますので必ずしもその範囲に収まるわけではございません。範囲外のデータが出た場合でもデータを入力することにより最適な度数がレンズに度数として反映されて仕上がってまいります。(個別オーダー以外は全国のお客様の平均値をベースに算出したものになります。)
レンズと角膜までの距離
・レンズの角膜頂点間距離はのお客様で12mm~14mmが最適と言われております。
アジア系のお顔立ちで12mm、ヨーロッパ欧米のお顔立ちで14mmが最適と言われております。レンズ~角膜頂点間の距離が12mm~14mmを保てない場合であっても数値をデータ入力することにより最適な度数が設定されレンズに度数として反映されます。
フレームのそり角
・フレームの形状やレンズのカーブ具合を写真より測定を行い、最適な度数がレンズデータに反映されます。
できるだけどの方向で見た時でも自然な見え方になるようにフレームのそり角を測定することでこちらもレンズへ最適な度数を反映させることができます。
(人間は上下よりも左右の揺れに敏感に反応します。真っ直ぐ一部分を注視していても側方の度数が干渉してくるので見え方がおかしく感じるのをできる限り減らし自然な見え方に近づけます)
・アイポイントシール
お客さま御一人に対して個別に違いが絶対にありますので正面からの目の距離も写真のようなシールを貼り測定し実際にどの部分で近くが見やすくなるのかなど設定させていただきます。
の写真のように専用のアイポイントシールを貼り、遠方を見るポイントを定め実際に位置を決めます。ピンク色の丸のターゲットが遠くを見るポイントで、レンズ下の方のオレンジのターゲットが近くが見やすくなるポイントです。
もちろん遠くと近くを見る間にも中間の距離を見るための度数が入っておりますので緩やかな度数変化が起こっております。この度数が緩やかに変化するというのが歪みに繋がるポイントでして、この歪みをできるだけ減らしお客様に快適にご利用いただくためにこれらのような個人のオーダー設計レンズが用意されております。